一ノ倉雪崩調査・講習。
2015年1月21日。
みなかみ町のスノーシューガイドの安全意識を高めて貰おうということで、合同の研修が開かれました。
私は特に参加するつもりは無かったのですが、今回の講師である中島さんから講師アシスタントで来るように言われて参加してきました。
既にガイドとして充分活動できる者達で、雪崩箇所のチェック・共通認識を持つ。
いささか経験の浅い人には、ガイドとして危険への認識を高めて貰おうという研修。
新米のガイド見習いの人には、とにかく経験を積んで貰おうという講習。
3つの側面を併せ持つ、合同での行動日になりました。
スノーシューをやっている全社ではありませんが、けっこう大勢の人たちが集まっていました。
私は、他の会社スタッフでも登山をやっているガイドさん達なら良く知っているのですが、普段山で見ない人達だと顔も名前も良く分からなかったりします。
何年も居る人なら顔は憶えるんですが、若い人たちの入れ替わりが激しいので中々憶えられません。
今回のメイン講師、中島正二さん。
雪崩ポイントの一つ、松ノ木沢の前で説明中。
「こんな吹雪の日にはマチガサワから先にゃ行っちゃならねぇ」なんて言葉がありますが、そこから先は大規模な雪崩の巣です。
(そこに行くまでも小さな雪崩ポイントは複数あります。小さいと言っても人間が死傷するには充分なものです。ただ、川の対岸から対岸まで破壊するような巨大な雪崩ポイントが無いというだけです。)
雪崩の巣のひとつ、アバランチシュート。
知らないガイドさんも多少なりとも混ざっていたので、今日こういう講習が開けてよかったと思いました。
真新しい雪崩の破壊跡。
ブロック欠片も多少混じってはいましたが、殆どはデブリを伴わない破壊の形跡。
一ノ倉コース近辺で見られるホウ雪崩の跡です。
状況的に見れば、先週末に発生したのでしょう。
水上町のスノーシューイベントで家族連れなどが集まっていた日でした。
当日、そのコースの責任を任されていた中島さんの判断でマチガサワよりも手前で引き返していたそうです。
さすが良い判断です。
*私はその日はお客さんが入らなかったのでプライベートでアイスクライミングをしていました。
若いガイドさん達にこの雪崩堆積区の雪の硬さを実際にに踏んで体験してもらい、「軽さ重視のポリカーボネート製のスコップでは絶対に歯が立ちません。ポリカーボネートのスコップ持ってる人は居ませんよね?」と投げかける。
が、返事がまったく返ってこない。ポリカーボネートのスコップを持っている人が一人も居なかったのか、ポリカーボネートの意味が分からなかったのか、持っていたからバツが悪くて返事できなかったのか。
一ノ倉沢の出会いから詰めて登る。
ここも、途中S字になるところでは右手斜面上から雪崩が襲ってくる可能性があります。
大抵は一段上の平らなところで止まるのですが、絶対にそこで止まるという保障はありません。
沢の左斜面の上によってトラバース気味で歩くか、安全を考えればそこから旧道に乗ってしまうルート取りが必要になるところです。
ラッセル役を買って出ていた若いガイドさんがそのまま危険箇所に真っ直ぐ歩いていってしまうので指示して左に上がって貰う。
ここは若いガイドさんだと来た事がないことも多いでしょうし仕方ありませんね。
旧道との合流。
ここもホウ雪崩でトイレが吹き飛んだ経歴がある場所です。
ホウが発生しそうな日には近づいてはいけませんし、テント泊をするならホウのルートを避けて大幅に沢から外れないといけません。
今日はこのコンディションではホウ雪崩は起きないでしょうが、道路部分から先は通常の表層や全層雪崩は何時でも何処からでも起き得る場所です。
休憩後、他の皆さんは一ノ倉岩壁の近くまで詰める為に出発。私は雪崩地帯に入りたくないのでお見送り。
しばらくは、一段高くなっている斜面上から併走して確認してましたが、途中からそれ以上近づかずに見守るだけにしました。
一ノ倉を見に行った人達が帰ってきました。
帰りはブナ林ルートで戻って来たようです。
今回、スノーシューガイドの皆さんに伝えたかった場所のひとつ。
ブナ林の中を定期的に雪崩が走る場所。
木の有るところに雪崩は起きないなんていうことは無い、というのをわかってもらうのにうってつけの地点。
湯檜曽川西側斜面から見たアバランチシュート全景。
こんな短かい走路、ほとんど無い発生区(走路と発生区の区別がほとんど無い)で対岸まで吹き飛ばしてしまうのですから驚きです。
マチガサワを横切り、新道沿いに戻る。
マチガサワも、過去何度かホウ雪崩がここまで届いています。
雪崩ポイントのことをよく分かってない人。ホウナダレが起きることを認識していない人。ホウナダレが起きることを説明したにも関わらず「伝説の雪崩でしょ」みたいな他人事な感じで危機感が薄い人。
ガイドによって様々な反応がありましたが、今後こういう取り組みで知識・レベルの平均を上げていくようしたいですね。
ゾンデ棒を所持して居ないガイド、必須装備として携行を義務化していない会社があることにちょっと驚いてしまいましたが、今日この講習を受けた後なら皆きっと必要装備として認識してくれると期待しています。