イワウチワ?トクワカソウ?。
2021年5月末
谷川岳に有るイワウチワ。
最近、ネットなどを中心にイワウチワではなくてトクワカソウだと言われているようです。
みなかみ町のガイドが新潟の山を訪れた際に「この山のイワウチワはトクワカソウだけど、谷川岳にあるのもトクワカソウ」と言われたり、
先日はみなかみ町のインタプリターのメンバーが一ノ倉沢にてオオイワウチワと言ったら通りがかりの人に「これはトクワカソウです」と言われたと報告を受けました。
谷川岳エコツーリズム推進協議会、インタプリターの見解としては谷川岳に咲いているのはオオイワウチワです。
写真の様に急傾斜地に咲いて居たり、尾根上の岩場に咲いていて葉が小さい個体も「水分環境や土壌成分が良くない所で葉が小型化したオオイワウチワ」となります。
国立公園である谷川岳は植物の学術調査が何度か行われていますが、発表されたリストにもトクワカソウの名は出てきていません。
インタプリター講習等で講師の先生を呼んだ際にもオオイワウチワと説明を受けています。
今回、先生にトクワカソウの生育の有無について質問しましたが谷川岳には無いとお答えいただきました。
もともとイワウチワの仲間は葉の変異が大きく、中間型やそこから連続して変異していくので、葉の形だけではっきりと区別することが難しく、地理的なまとまりも含めてオオイワウチワ群として捉える方が適切だと考えられています。
確かに「谷川岳にはトクワカソウ」と書かれている図鑑もあるのですが、植物の分類はいろんな意見を持っている先生が居て、その図鑑はその意見のひとつ、ということで考えていただければと思います。
大量の雪や雨で削られた急斜面に生えている葉。
小型化してまさにトクワカソウの葉と同じです。
でも、同じ株や近くの株からこうして大型化しようとしている葉も出てきています。
水分環境・土壌環境が悪い為なのか、大型化した葉はもう枯れる寸前です。
トクワカソウに似た葉の個体が並んでいる斜面でも、ブナの根が土壌の流失を防いで多少環境が良くなったところでは葉がある程度大型化しています。
画像の葉だとオオイワウチワとトクワカソウの中間型から少しオオイワウチワ寄り、という感じでしょうか。
ある程度開けた崩壊地と違ってブナの影ということで、日射が当たり難いのも葉が大きくなるポイントかもしれません。
光を求めて葉を大型化しているわけですので、日射が十分な場所ならば製造コストをかけて葉を大きくする意味もありませんし、乾燥に弱い大型の葉を付けるリスクを負う必要もありません。
もっと奥に行くと、安定したブナ林の中でまさにオオイワウチワという群落が咲いています。
この時期はまだそこでは咲いていなかったので写真は撮って有りませんでしたが、大きな葉の中にもところどころ小さな葉の個体が混じります。
それだけ、イワウチワの仲間は葉の形の変異が大きいのです。
もちろん、葉の形を基準として個体ごとにトクワカソウとイワウチワを見分けると考えるかどうかは個人の自由になります。
ただ、以上のことを踏まえたうえで「谷川岳とその麓に咲いているのはオオイワウチワ」と地元インタプリター/ガイドが説明するもの、許容していただければと思います。
2021年5月。